日本商工会議所から、2027年度の日商簿記検定試験に適用される新しい出題区分表が発表されました。
新しい出題区分は、2027年4月1日から2028年3月31日までに実施される試験に適用されます。統一試験、団体試験、ネット試験のいずれも対象です。
なお、2027年3月31日までに実施される試験は、現在の出題区分のままです。
この記事では、当試験会場で実施している日商簿記2級・3級ネット試験と簿記初級を中心に、主な変更点と受験時の注意点をご紹介します。
※本記事は、2026年8月1日現在の情報をもとに作成しています。
2027年4月1日から新しい出題区分が適用されます

日本商工会議所は、2025年12月25日に2027年度の出題区分表の暫定版を公表していました。
その後、内容の検討が行われ、2026年7月31日に確定版が発表されました。
適用される出題区分は、受験日によって次のように分かれます。
| 受験日 | 適用される出題区分 |
|---|---|
| 2027年3月31日まで | 現在の出題区分 |
| 2027年4月1日以降 | 2027年度の新しい出題区分 |
ネット試験は、受験日を比較的自由に選べます。そのため、2027年3月から4月にかけて受験を予定している方は、受験日と使用する教材の対応年度をよく確認する必要があります。
新しい出題区分表には、2027年4月1日施行と明記されています。
簿記初級についても、同じく2027年4月1日から新しい出題範囲が適用されます。
今回の改定の背景
今回の出題区分改定には、大きく二つの背景があります。
一つは、紙の手形・小切手の廃止です。
全国銀行協会は、2026年度末をもって電子交換所における手形・小切手の交換を廃止することを決定しています。企業間の決済方法が変化することに合わせて、日商簿記検定でも紙の手形や小切手に関する出題内容が見直されます。
もう一つは、新しいリース会計基準への対応です。
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以降に始まる事業年度から強制適用されます。これに伴い、主に簿記2級と1級のリースに関する出題内容が改定されます。
また、紙の手形や小切手に関する内容がなくなることで、主に3級の出題範囲が減るため、これまで2級の範囲だった一部の内容が3級へ移されます。
単純に出題範囲が広がるというより、実務で使われなくなる内容を整理し、現在の企業活動に合った内容へ置き換える改定と考えると分かりやすいでしょう。
主な変更点

今回の主な変更点をまとめると、次のようになります。
| 対象 | 主な変更点 |
|---|---|
| 全体 | 紙媒体による手形・小切手に関する内容を削除 |
| 3級 | 売上原価対立法を2級から移行 |
| 3級 | 固定資産の除却・廃棄を2級から移行 |
| 3級 | 定率法による減価償却の基本的な内容を追加 |
| 2級 | 売掛債権の譲渡を「ファクタリング」として明確化 |
| 2級 | 新しいリース会計基準に対応 |
| 2級 | 短期リース・少額リースの取り扱いを追加 |
| 簿記初級 | 紙の小切手・手形に関する問題を削除 |
| 簿記初級 | 株式会社の資本金と株式発行の取引を追加 |
なお、工業簿記・原価計算については、今回の出題区分改定による変更はありません。
日商簿記3級の主な変更点
今回の改定では、3級に比較的大きな変更があります。
紙の手形・小切手に関する内容がなくなります
これまで3級では、
- 小切手を振り出したときの処理
- 小切手を受け取ったときの処理
- 約束手形の振出し、受入れ、決済
- 受取手形、支払手形に関する処理
などが出題範囲に含まれていました。
2027年度からは、紙媒体による手形・小切手に関する規定が削除されます。
ただし、電子記録債権・電子記録債務は引き続き出題範囲に含まれます。紙の手形がなくなることで、今後は電子記録債権・電子記録債務の重要性が、より高くなると考えられます。
普通預金が出題区分表に明記されます
普通預金は企業でも広く使われていますが、これまで出題区分表には明確に記載されていませんでした。
新しい出題区分表では、現金預金の項目に「普通預金」が追加されています。
また、小切手の利用がなくなることで当座預金の重要性は以前より低くなりますが、当座預金そのものが出題範囲からなくなるわけではありません。
キャッシュレス決済が明記されます
クレジット売掛金については、クレジットカードだけでなく、各種のキャッシュレス決済によって生じた債権も含むことが明記されます。
現在の実務に合わせた変更といえるでしょう。
売上原価対立法が3級の範囲になります
「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法による売買取引の処理」が、2級から3級へ移ります。
一般に、売上原価対立法と呼ばれる方法です。
これまで3級で中心となっていた3分法では、決算整理を行うまで売上原価が確定しません。一方、売上原価対立法では、商品を販売するたびに売上原価を記録します。
商品を販売したときには、売上を記録する仕訳に加えて、売上原価を記録する仕訳も行います。
これまで2級の内容だったため、2027年度以降に3級を受験する方は、新たに学習する必要があります。
固定資産の除却・廃棄が3級へ移ります
備品や車両運搬具などの固定資産を、使用しなくなったため帳簿から取り除く「除却」や、不要になったため処分する「廃棄」も、2級から3級へ移ります。
固定資産を取得したときや売却したときだけでなく、使わなくなったときの処理についても学習することになります。
定率法による減価償却が3級へ移ります
これまで3級の減価償却は、主に定額法が対象でした。
2027年度からは、定率法による減価償却も3級の出題範囲に加わります。
ただし、3級では定率法の基本的な仕組みを理解することが目的です。問題では償却率が具体的に示されるなど、簡易な内容に限られます。
法人税法上の200%定率法における保証率や改定償却率など、複雑な計算は3級では出題されません。
3級で複雑なリース処理が出題されるわけではありません
新しいリース会計基準が適用されますが、3級で使用権資産やリース負債を計上するような処理が求められるわけではありません。
店舗や事務所の家賃、駐車場代などについては、これまでどおり「支払家賃」「支払地代」などを使った処理が出題されます。
日商簿記2級の主な変更点
2級では、紙の手形に関する内容の削除に加えて、ファクタリングとリースに関する変更が中心となります。
売掛債権の譲渡が「ファクタリング」として明確になります
これまで「その他債権譲渡」とされていた内容が、「売掛債権の譲渡(ファクタリング)」と明確にされます。
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社などに譲渡し、支払期日より前に資金化する方法です。
2級では、買取型の2社間ファクタリングや3社間ファクタリングについて、簡易な内容が出題されます。
新しいリース会計基準に対応します
新しいリース会計基準では、借手側について、従来のファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区分がなくなります。
これに伴い、2級で使用する勘定科目も、
- 使用権資産
- リース負債
- 使用権資産減価償却累計額
などへ変更されます。
一方、利子込み法と利子抜き法の両方が出題されることや、利子抜き法で利息相当額を定額法により配分することは、従来と変わりません。
短期リース・少額リースが加わります
2級では、短期リースと少額リースの取り扱いが新たに明記されます。
短期リースや重要性の低い少額リースについては、使用権資産やリース負債として計上せず、賃貸借処理を行う場合があります。
なお、2級では、ある契約がリースに該当するかどうかを受験者自身が判断するような高度な問題は想定されていません。リース期間など、処理に必要な条件は問題文で与えられることになります。
工業簿記・原価計算には変更がありません
今回変更されるのは、主に商業簿記の範囲です。
2級の工業簿記・原価計算については、2022年度から適用されている出題区分から変更はありません。
日商簿記1級について
1級についても、紙の手形・小切手の削除、新しいリース会計基準への対応、債権譲渡に関する内容の整理などが行われています。
リースの識別、契約変更、サブリース、借地権の処理など、2級よりも高度な内容が1級の範囲として示されています。
当試験会場では日商簿記1級を実施していないため、この記事では詳細を省略します。
1級を受験予定の方は、日本商工会議所が公開している確定版の出題区分表と、使用する教材の対応年度を必ずご確認ください。
簿記初級の出題範囲も変わります
簿記初級についても、2027年4月1日から新しい出題範囲が適用されます。
簿記初級は、簿記を初めて学ぶ方を対象に、日常業務で必要となる簿記の基本的な知識や技能を問う試験です。
今回の改定では、実際の企業取引の変化を反映するとともに、個人企業だけでなく株式会社についても基礎的な内容を学べるようになります。
紙の小切手・手形に関する問題が削除されます
簿記初級でも、紙の小切手と手形の廃止に伴い、紙媒体の小切手・手形に関する問題がすべて削除されます。
一方で、電子記録債権・電子記録債務は、新しい出題範囲にも含まれています。
また、クレジット売掛金については、キャッシュレス決済を含むことが明記されています。
紙の手形や小切手から、電子的な決済やキャッシュレス決済へ移行している現在の取引環境に合わせた内容となっています。
株式会社の資本金が加わります
これまでの簿記初級では、主に個人企業の簿記を想定し、事業主による追加元入れや引き出しなどを扱っていました。
2027年度からは、これに加えて、株式会社の資本金が出題範囲に加わります。
対象となるのは、
- 株式会社の設立時に株式を発行する取引
- 会社設立後の増資時に株式を発行する取引
です。
簿記初級では、株式発行に関する複雑な処理までは求められません。株式の発行価額の総額を資本金として処理する、基本的な内容に限定されます。
新しい出題範囲には、個人企業の資本金と株式会社の資本金の両方が記載されています。
簿記を学ぶ方の多くが株式会社で働くことを考えると、身近な企業活動に結びつきやすい変更といえるでしょう。
税金に関する内容
新しい出題範囲では、次の税金が示されています。
- 所得税
- 固定資産税
- 印紙税
- 消費税
消費税については、税抜方式に限られます。
印紙税は、これまでも「固定資産税など」に含まれるものとされていましたが、新しい出題範囲では「印紙税」として明記されています。
月次の集計も引き続き重要です
簿記初級では、仕訳だけでなく、試算表の数値を読み取る力も問われます。
新しい出題範囲にも、合計試算表、残高試算表、合計残高試算表を使った月次集計が掲げられています。
試算表から読み取る項目の例として、次のようなものがあります。
- 資産総額
- 現金残高
- 現金の純増加額
- 預金残高
- 売掛金回収額
- 売掛金残高
- 商品残高
- 商品仕入高
- 負債残高
- 買掛金残高
- 資本金
- 未払いの税額
- 売上高
- 費用総額
- 当月の損益
単に仕訳を暗記するのではなく、帳簿や試算表の数字が何を表しているのかを理解することが、引き続き大切になります。
これから受験する方は、受験日と教材をご確認ください
今回の改定で特に注意したいのは、受験日によって出題範囲が変わることです。
2027年3月31日までに受験する場合
2027年3月31日までに実施される試験は、現在の出題区分に基づいて出題されます。
現在使用している2026年度対応のテキストや問題集で学習を進めることができます。
受験を予定している方が、今回の発表を見て、すぐに新しい内容へ切り替える必要はありません。
2027年4月1日以降に受験する場合
2027年4月1日以降の試験では、新しい出題区分が適用されます。
教材を購入するときは、
- 2027年度対応
- 新出題区分対応
- 2027年4月試験対応
などの表示を確認してください。
特に日商簿記3級では、売上原価対立法、固定資産の除却・廃棄、定率法による減価償却などが加わります。
2級では、新しいリース会計基準に対応した教材を使用する必要があります。
出版社によって新しい教材の発売時期は異なるため、購入前に対応年度を確認しましょう。
公式情報と参考記事
詳しい出題区分や変更箇所については、次のページをご確認ください。
日本商工会議所の公式情報
2027年度に適用される確定版の出題区分表、変更箇所を記載した資料、改定項目の説明書などが掲載されています。
最終的な出題範囲については、こちらの公式情報をご確認ください。
TAC出版の解説記事
【日商簿記】2027年度の試験から出題区分が変わります!|TAC株式会社 出版事業部
級ごとの主な変更点が「早わかり表」にまとめられており、全体像を確認する際に分かりやすい記事です。
ただし、TAC出版の記事は、2025年12月に日本商工会議所から発表された暫定版をもとに作成されたものです。
2026年7月31日に確定版が発表されていますので、最終的な内容や細かな変更については、日本商工会議所の公式ページもあわせてご確認ください。
Office TAKUで受験される方へ
Office TAKUは、日本商工会議所ネット試験の公認試験会場です。
当試験会場では、次の試験を実施しています。
- 日商簿記2級ネット試験
- 日商簿記3級ネット試験
- 簿記初級
2027年3月31日までの試験は現在の出題区分、2027年4月1日以降の試験は新しい出題区分に基づいて実施されます。
受験を予定されている方は、受験日と、学習に使用しているテキスト・問題集の対応年度をご確認ください。
試験の日程やお申し込み方法については、当試験会場の受験案内ページをご覧ください。
