書籍

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(昭和十二年 新潮社発行)は私の原点であり情報リテラシーの入門書でもある

こんにちは。
@OfficeTAKUです。

はちた君
かるき生うど

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』新潮社、昭和十二年八月十日発行

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』表紙
新潮社、昭和十二年八月十日発行

こう表紙にに印字された一冊の本が私の手元にあります。

そう昨今マンガになって話題となった『君たちはどう生きるか』の初版本です。

これは私の亡き父の蔵書。
私が小学校5年生の時に手にして以来、折りに触れ読んでいたものです。

私の視座を決めた一冊。
私の中での憲法のようでもあり、バイブルのような一冊です。

初版『君たちはどう生きるか』は新潮社発行

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』新潮社、昭和十二年八月十日発行

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』表紙 見返し
新潮社、昭和十二年八月十日発行

そう、この私のバイブルでもあるこの一冊は今話題の新潮社の発行です。
奥付をみてみましょう。
原文は旧字体で記されています。

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』新潮社、昭和十二年八月十日発行

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』奥付
新潮社、昭和十二年八月十日発行

日本少国民文庫
君たちはどう生きるか

昭和 十二 年 八 月 五 日 印刷
昭和 十二 年 八 月 十 日 発行
予約 定価一円
著作者 山本有三、吉野源三郎
発行者 佐藤義亮
印刷所 富士印刷株式会社
発行所 新潮社

本文も旧字体ですがほとんどの漢字にルビが振ってあるので小学生の私でも読めたのです。

裏表紙の見返しには「H.Kitamura」と父のサインが入っています。

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』新潮社、昭和十二年八月十日発行

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』裏表紙 見返し
新潮社、昭和十二年八月十日発行

物事をこの社会を見る目、視座を教えてくれた『君たちはどう生きるか』

主人公の本田くんことコペル君は中学二年生。
お父さんは既に亡く、コペルくんの導き役となるのがお母さんの実の弟である叔父さん。
大学を卒業して間もない法学士です。

私が小学生当時読みはじめてとても心に残ったのが冒頭に出てくる叔父さんが「製造した」「コペル君」というあだ名の由来を巡るお話しです。

「人間分子の関係、網目の法則」

Photo by Timon Studler on Unsplash

Photo by Timon Studler on Unsplash

コペル君は叔父さんと二人で、銀座のあるデパートメントストアの屋上から、下を見下ろしていました。

東京の町をみおろし、行き交う車が小さく見え虫のように見えてくる。
雨に煙る東京はいままで知らないような真面目な顔をみせ、何だか沈んだ気分になる。
数えきれない屋根が立ち並ぶ、この屋根の下にいったいどれくらいの人が住んでいるのか?
行き交う車と一緒に一台の自転車を見つけ、一生懸命自転車を漕ぐ少年に想いを馳せる。
つい先程下の道を歩いていた自分を誰かがみていたかも、と見ている自分と見られている自分に思いがいたる。
そうした眼科の情景から、「人間ってほんとに分子みたいなものだね。」という感想を抱く。
そうして、友人たちや叔父さんとのやりとりへ、家に置かれている一つの粉ミルクの缶からその道程をたどることで、大きな発見にいたるのです。それが
「人間分子の関係、網目の法則」です。

コペルくんが教えてくれた視座

デパートの屋上から町をみる、車の流れ人の流れ、一つ一つの屋根の下にいる人のことを思う、そうした俯瞰的なものの見方。
そして、粉ミルクがオーストラリアで製造され口に入るまでの流れをみていくことで、そこにどんな人が携わり、どんな物語があるか、考える。目に見える今の一つのものにどんなに多くの人が関わり、知られない物語があるのか、想像する。

そうした視点を教えてくれたのが『君たちはどう生きるか』なのです。

そうして、そうした視座は情報を見る上でも同様なのです。

911後のアフガニスタンで米軍の「誤爆」により罪のない多くの人々の命が奪われました。新聞では、言葉にすれば「誤爆」というたったの二文字でしかありませんが、その下にどれだけ多くの悲しみと怒りと、そして憎しみを生んでしまったのか、コペルくんのように考えてみればよくわかることでしょう。

ヘイトスピーチやSNS上で無責任に放り投げられる言葉を、やすやすと受け入れてしまう人があまりにも多く思えます。

事実に照らし合わせながら自分の頭で考える、想像する、思いを巡らせる、そうした人間らしい営みを放棄してはいけないことを、この『君たちはどう生きるか』が教えてくれています。

昭和十二年の新潮社

昭和十二年という年にこのような書籍が発行されたことは驚きでもあります。
編集者としての吉野源三郎さんの力も大きかったことなのでしょう。

そして、新潮社はこんな素晴らしい書籍を刊行していたこともある、ということを、今の新潮社の編集者にもぜひ知って欲しいと思います。

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