VERAプロジェクト前倒し終了:『恋する小惑星(アステロイド)』にも登場した国立天文台VERA石垣島観測局は電波望遠鏡はどうなる?

VERAプロジェクト WebService


こんにちは。
アニメも観る @OfficeTAKUです。

Amazon プライム・ビデオとU-NEXT で映画・TVドラマ・アニメなど観ています。いくら時間あっても足りません。
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さて、先日放映が終了した TVアニメ『恋する小惑星(アステロイド)』についての話題。

TVアニメ『恋する小惑星(アステロイド)』

天文に興味がある人間には大変楽しめました。興味があるだけで、知識のない私には非常に勉強にもなりました。登場人物は基本的に悪い人たちがでてこないので安心してみることができるのも、ちょっと鬱々とする今観るのに適していると思います。
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『恋する小惑星(アステロイド)』Amazon primevideo

原作は、Quroさんが『まんがタイムきららキャラット』というマンガ誌(4コマ漫画専門雑誌)に2017年から連載している同名マンガです。

作者のQuroさんは、高校時代に地学部だったそうです。また、以前はつくば市の「高エネルギー加速研究機構」に勤務されていたそうです。
作品に登場する天文、地球科学に関する記述は資料を調べ正確な知識を伝えることを重視しているとのことです。

高校生による天文学研究体験「美ら星研究体験隊」

『恋する小惑星』の二人の主人公 木ノ幡みら と 真中あお が国立天文台の「きら星チャレンジ」に参加。

石垣島天文台にある口径105cm光学赤外線望遠鏡「むりかぶし」とVERA20m電波望遠鏡を利用し小惑星の発見に挑みます。
VERA石垣島局と石垣島天文台がアニメ「恋する小惑星」に登場 | 石垣島天文台

この高校生を対象とした体験授業は実際に行われています。
名称は「美ら星探検隊」。2005年に毎年夏に行われています。

昨年 2019年も実施され、実際に新しい星が発見されています。
今回で新しい電波星の発見・確認は8例目とのことです。

VERAプロジェクト

石垣島天文台にある20m電波望遠鏡は国立天文台のVERAプロジェクトのために設置されたもの。
このVERAの電波望遠鏡は、国立天文台水沢VLBI観測所を中心に小笠原、鹿児島県入来、そして石垣島の4箇所に設置された電波望遠鏡を組み合わせて使用し観測するプロジェクトです。

このプロジェクトの目的は「銀河系の3次元立体地図を作る」ことだそうです。
VERAプロジェクトの公式サイトには次のように記載されています。

VERAは、銀河系の3次元立体地図を作るプロジェクトです。

VLBIという電波干渉計の手法を用いて、銀河系内の電波天体の距離と運動をこれまでにない高い精度で計測し、銀河系の真の姿を明らかにします。
国立天文台を中心に、多くの大学や研究所からさまざまな分野の研究者が参加し、2003年から観測が始まっています。

※VERAとは、「VLBI Exploration of Radio Astrometry」を略したもので、「VERA」はラテン語で「真実」を意味します。

ブラックホール撮影にも大きく貢献

昨年4月、史上初めてブラックホールの撮影に成功、とのニュースに世界中が沸き立ちました。

このブラックホールの撮影は画期的なこと。
米科学誌サイエンスは科学ニュース「2019年の大発見」にこのブラックホールの撮影を選び、「チームワークと技術が生んだ驚くべき偉業だ」と評価しました。
「今年の大発見」にブラックホール撮影 – 産経ニュース 2019/12/20

そして「科学会のアカデミー賞」と言われる「ブレクスルー賞」にブラックホールを撮影したイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)チーム 総勢347名に与えられました。
このブレイクスルー賞はGoogle共同創始者のセルゲイ・ブリン氏夫妻、フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏夫妻、アリババ創業者ジャック・マー氏夫妻とシリコンバレー投資家のユーリ・ミルナー氏夫妻により2017年に共同創設された賞。賞金はノーベル賞の約2倍にあたる300万ドル(約3億2000万円)、科学分野では最も賞金額が高い賞です。
基礎物理学、生命科学、数学の3部門があり、それぞれの分野での最先端の業績を称えるもの。チームでの受賞も珍しくないそうです。
受賞メンバーの一人である国立天文台水沢VLBI観測所の田崎文得さんが下記のように話されています。
「今回のEHTチームにはベテランの教授から科学者としてのキャリアが浅い大学院生まで含まれていて、賞金は全員で分かち合うそうです。チームメンバー全員の功績がこうして平等に称えられるのは非常に嬉しい」
詳細は下記のGIZMODの記事を参照して下さい。

このブラックホールの撮影には、VERAプロジェクトの中心地である国立天文台水沢
VLBI観測所とその研究者たちが大きく貢献しました。

VERAプロジェクト突然の前倒し終了と予算半減の通告

ここまでみてきたように、研究成果も次世代の研究者の育成に大きく貢献していることは誰の目にも明らかなVERAプロジェクト。
しかし、2020年3月26日、国立天文台執行部が突然のプロジェクトの終了と予算半減を決定しました。

この度、国立天文台の執行部方針として

i) 水沢VLBI観測所のVERAプロジェクトの今シーズン末(2020年6月)での前倒し終了
ii) それに伴う当観測所予算の削減(昨年比で約5割減)

が3月26日付けで観測所宛てに正式に通知されましたので、コミュニティの皆様にもここにお知らせします。
(中略)
1) 現在のVERAのアンテナ全4局の観測運用(VERAおよび、日韓VLBIと東アジアVLBIも含む)は現在の観測シーズン(2020年6月中旬まで)で終了する見込みです。
2) 2020年7月以降は予算削減の影響でVERAの4局のアンテナのうち、水沢局以外の3局(入来、小笠原、石垣島局)の運用が停止する見込みです。
3) 2020年7月以降の共同利用については、
 a) VERAの共同利用は廃止
 b) 日韓VLBI(KaVA)は現在の7局→4局へ削減して運用
 c) 東アジアVLBI(EAVN)は現在の最大11局→最大8局へ削減して運用
となる見込みです。
VERAプロジェクト前倒し終了および今後のアンテナの運用停止見込みについて | 国立天文台 水沢

このニュースは一般紙誌でも報道されました。
毎日新聞


フライデー

岩手日報の記事によると「(国立天文台が)予算を追加し、年度内の観測を続ける方向で調整している」が、「21年度以降の観測継続が不透明な状況は変わらず、関係者は依然として危惧している。」とのことです。

この問題の研究者方々のTweetがまとめられています。

削られる基礎研究予算・この国の未来はどうなる?

昨年、これも話題になりましたが、国立天文台は、防衛省の軍事技術に応用可能な基礎研究の助成制度を利用できるように方針転換しました。

『恋する小惑星』の純粋な思いとは大きくかけはなれ、現在の日本の天文学、研究の先行きが懸念される、大人の政治的な思惑も透けてみえる嫌な話題です。

近視眼的な基礎研究費の削減や軍事利用に関しては、天文に関心がある人だけではなく多くの人が関心をもち目を光らせていかなければならない問題だと思います。

このままいけば、日本の科学技術が衰退し、優秀な研究者は海外へ流出、という流れは加速するばかり。

VERAプロジェクト継続支援署名

VERAプロジェクトの継続を支援しようという署名が change.org で行われています。
とりあえず、できることとして署名しました。


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