サマータイムは亡霊か?何度も呼び戻されてくる愚策に対抗するために知っておくべきこと

日記

こんにちは。
@OfficeTAKUです。

以前、職業訓練講座を担当していた時、週に1度のペースで「10分間タイピング」というのをおこなっていました。

テキストに掲載されている文章や私が集めた新聞記事や書籍からの文章をワードで入力していく練習です。
300字〜800字程度の文章を10分間で何文字入力できるか、自身のタイピングと日本語変換のスキルアップを確認してもらうためです。

その「10分間タイピング」で使用していた文章の中に、朝日新聞「天声人語」1996年3月28日付があります。

日本でもサマータイムは導入されていた

その天声人語から一部抜粋した文章が下記になります。

 取材先のイタリアで、長距離特急に乗り遅れたことがある。十分間に合うはずの時間にホテルで支払いを済ませ、何気なくカウンターの中の時計を見ると、何と発車5分前。スーツケースを手に全力で疾走したが、ホームで見たのは、どんどん遠くなる列車の後尾だった。
原因はその日から始まったサマータイムである。未明、ホテルでも駅でも時計の針をいっせいに1時間進めたのに、私一人がカヤの外。わが腕時計の朝8時は、世間では朝9時だったのだ。
日本でも1948年に、当時の占領軍のすすめでサマータイムが実施された。「昼間」をたっぷり利用しようというもくろみだったが、睡眠不足になる、明るいうちから酔っぱらいが出没する、と不評があいつぎ、4年で廃止された。
中国では1986年に節電をねらって採用されたが、十分な効果が上がらず、交通機関などの不便が大きい、と1992年に取りやめられた。フィリピンでも節電対策に一時とりいれたが、廃止された。
「省エネや余暇の充実」を目的に、日本にもサマータイムを、と再び国会に法案を提出する動きがあるようだ。その際、かつての日本をはじめ、近隣諸国でもなぜ根付かなかったのか、も考える必要がある。

もともとはnoa出版さんのテキストかドリルに掲載されていたものなので孫引きになります。原典あたっていませんがご容赦ください。

私はこの文章でサマータイムが過去日本でも導入されていたこと、サマータイムを復活させようという目論見がまたぞろでてきていたことを知りました。

この天声人語からもわかるように、サマータイムはまるで亡霊のように何度も復活してきます。そう言えばいまの総理もお腹痛くて辞めてから復活してきた方でしたね。

サマータイムを巡る日本での動き

Wikipediaなどを見ながら、日本でのサマータイムを巡る動きをまとめてみました。

1948年〜1952年 サマータイム実施
1995年 省エネルギーなどを名目としたサマータイムの再導入が一部議員を中心に検討
2004年 衆参両院超党派の100名超の国会議員ら「サマータイム制度推進議員連盟」設立
2007年 日本経済団体連合会(日本経団連)が自由民主党に対して夏時間の導入を提案
2008年 自民党「地球温暖化対策推進本部」を設置。サマータイムを温暖化対策の重要な施策と位置づける
2018年 2020年開催の東京オリンピックを名目にサマータイム導入策動はじまる

どうしてこんなに懲りないんでしょう。

サマータイムに反対する理由

  • 1時間なり2時間なり時間を書き換える形で時間をずらす必要性がどこにある
  • 多くの無駄な手間と金が発生する
  • 健康上もよくない
  • パニックを引き起こす(個々人もシステムも)可能性が高い

あーた、2000年であれだけ大騒ぎしたシステムの問題はどうするの。

世界各国で導入されていると言いながら、やってたけどやめた国も多いのです。
これまで、何度もやろうとして出来なかったことをなぜまた蒸し返すのか!

そこで、私と同様、サマータイムに反対するひとたちの声とその理由を集めてみました。

まずはこちらのキャリコネニュースさんの「東京五輪でサマータイム導入か「政府はエンジニアを絶滅させたいの?」「46道府県を巻き込むな」反対意見続出」との記事で紹介されている声(タイトルに含まれちゃってますが)

「オリンピックにかこつけて、やりたかったことを無理やりやろうとしてない?」
「政府はエンジニアを絶滅させたいの?」
「46道府県を巻き込むな」

*キャリコネニュース https://blogos.com/article/316052/

うん、やっぱりみんな同じこと考えてるなぁ、と安心。

「先進国ではほとんど導入、日本は遅れている」の嘘

サマータイムを推進しようとしている人たちは、
「先進国ではほとんどが導入」イコール「日本は遅れてるよ」
みたいな言い方をしますが、それはほんとうでしょうか?

一部の資料では、先進国はサマータイムを実施していると書いてありますが、先進国には高緯度にある国が多いためで、正確には高緯度にある先進国ではサマータイムを実施しているというべきだと思います。

*サマータイムについて|Time-j.net https://www.time-j.net/uc/dst/

上記、Time-j.net さんのサイトにはサマータイム導入・非導入の国の地図が掲載されています。
その地図をみてみるとすごく納得します。上の方に集中しています。

さらに、先程のキャリコネさんの記事には最近のEUでもサマータイム見直しの検討がされているとのことです。

世界の動きを見ると、サマータイムを新たに導入する国、廃止にする国など様々だが、今年に入っては、1月にフィンランドがサマータイムを廃止している。また、欧州委員会は7月から、夏時間・冬時間の切り替えを維持すべきか、EU加盟国全てで廃止すべきかなどの意見募集を行っている。

*キャリコネニュース https://blogos.com/article/316052/

また、こちらのハーバードビジネスオンラインさんの記事ではより詳しくヨーロッパの動向がわかります。

「夏時間で電力消費節約はうんざりだ!」EUで高まる「夏・冬時間変更制」への不満
https://hbol.jp/162964

死刑制度や夫婦別姓に関しては先進国を見習わない、世界を見習わないのに、サマータイムだけはやけに熱心です。
お金がたんまり入る人たちがいるに違いありません。

【必読】 森本雅樹「サマータイムについて考えました」

サマータイムを導入すべきではないと天文学に基づいた主張をされているのが、日本天文学会の「おじさん」こと日本国立天文台・鹿児島大・東大 名誉教授だった、森本雅樹さん(故人)。
公益社団法人 日本天文学会が発行する『天文月報』1996年9月のに「サマータイムについて考えました」という文章を寄稿しています。
天文学権威からの真摯な見解であり、なおかつ優しくわかりやすくまとめられています。お人柄が忍ばれる文章です。

その中では、
・九州などではすでに天然のサマータイムになっている
・サマータイムを実施すれば、さらに生物時計を狂わされること
・サマータイム推進派のいう「省エネ」、「経済効果」への反論
など、わかりやすく書かれています。

天文学者としての危機感から、当時のサマータイム導入の動きに対して反対の声をあげ、その愚を広く世間に広めるよう活動し、シンポジウムも開催されています。

この森本雅樹さんの主張だけでも十分にサマータイムがいかに馬鹿げたことか、納得できるはずです。

下記のリンクからぜひご一読下さい。

「サマータイムについて考えました」天文月報 1996年9月 第89巻 第9号|公益社団法人 日本天文学会
https://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1996/pdf/19960903c.pdf

【必読】「サマータイム -健康にあたえる影響-」一般社団法人日本睡眠学会 サマータイムに関する特別委員会

サマータイムの導入による健康への影響は一般社団法人日本睡眠学会 サマータイムに関する特別委員会が報告書で指摘しています。
ちょっと報告書からどんな影響があるか一部抜粋して紹介。

  1. 生体リズムへの影響
    イギリスでの調査結果によると、春の変更後は、
    一度新しい時刻に適応してもまた元に戻る揺れ戻しがあり、1週間経っても新しい時刻には合いませんでした。さらに朝には眠気、ぼんやり感、集中困難などの気分変調が伴っていたのです。これは、わずか1時間でも生活リズムを早めると、心身に悪影響をおよぼすことを示した結果、と解釈されています。
  2. 眠りの質への影響
    フィンランドの調査結果では、
    睡眠効率(眠ろうと横になっている時間に対して、実際に眠っている時間の割合)
    が10%低下することを初めて報告しています。これは寝つきが悪くなり、かつ夜間の目覚めが増したことを示しており、眠りの質の低下の結果と解釈されている。
  3. 眠りの量への影響
    フィンランドの研究では、夏時間への移行時には睡眠時間が約1時間減るほか、ドイツでも同様な調査結果がでている。

ロシアが時刻変更を中止した理由は健康被害です。夏時間への移行時に救急車の出
動回数が増え、検証の結果、心筋梗塞患者が増加していたのです。

*「サマータイム -健康にあたえる影響-」一般社団法人日本睡眠学会 サマータイムに関する特別委員会 summertime_20120315.pdf
https://www.jssr.jp/data/pdf/summertime_20120315.pdf

ロシアは、2011年に、1917年から続いていたサマータイムのための時間変更をやめて、夏時間を通年使用することにしたものの、不満が相次ぎ2014年に冬時間に固定(地域により違いあり)したとのことです。
詳細は下記の記事を

ロシアで冬時間が復活、国民の不満を受け変更:AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3029972

なお、上記の日本睡眠学会の報告書をもとに精神科医 西多雅規氏がまとめて下さっています。報告書全文読む時間の無い方は西多氏の記事だけでもどうぞ。

サマータイムが愚策である10の理由(西多昌規) – 個人 – Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/nishidamasaki/20180807-00092263/

賛成派の意見

いままでの意見を元に見ていただきたいのが、環境省作成のこの資料「サマータイムパンフレット」。
恐らく2008年頃のものかと思われます。

サマータイムパンフレット|環境省
過去に環境省が作成したサマータイムに関するパンフレット
2018年12月12日追記:
以前掲載のURLはリンク切れとのご連絡をセレクトラ山田様よりご連絡頂きましたので、リンクを差し替えました。

なんというか都合良すぎの呆れる内容です。
特に「太陽の明るさが可能にしてくれるライフスタイルの提案」という項目では、
サマータイムを実施することで「私たちの「生き方」「暮らし方」「働き方」が大きく豊かにかわる可能性がある」として10項目の提案をしています。

見出しだけ抜き出してみると

  1. 4月と10月に気持ちをギアチェンジしよう
  2. 地域の特性にあった時間活用を工夫しよう
  3. 家族の触れ合い、友人との交流、ボランティア活動を楽しもう
  4. 余暇を楽しみ、スポーツに汗を流し、深い睡眠をとろう
  5. 省エネルギーに撤し、サマースタイル・ECOスタイルを常識にしよう
  6. 交通事故や犯罪が少ない安全な社会を築こう
  7. 時間価値を創造し、ワーク・ライフバランスを実現しよう
  8. 余暇を楽しみ、産業活性化と雇用拡大を実現しよう
  9. ノーマライゼーションの社会を築こう
  10. 四季を楽しみ、観光立国をめざそう

*サマータイムパンフレット|環境省
過去に環境省が作成したサマータイムに関するパンフレット

1から10まで腹立たしくあきれることばかり。
1番目のギアチェンジに関しては、新年、年度替わり、入学式、卒業式、半期、四半期、と学校や職場でもギアチェンジする機会は十分に設けられています。サマータイムでギアチェンジなど唱える必要もありません
2番目の地域の特性あった時間活用を、って、それは一斉にサマータイム導入することは余計に妨げになるばかりじゃん、とか、もうなんなの!っていうレベル
特に6番目が酷いので、6番目だけ全文引用

6. ノーマライゼーションの社会を築こう
身体障害者や高齢者等、社会的弱者と言われる人々は暗い夜間の活動を控えがちですが、明るければ活動範囲を広げることが可能です。目の不自由な人の8割は弱視であり、サマータイムは行動範囲や行動時間の拡大につながると思われます。子供、老人、障害者の安全と活躍の場を創り、ノーマライゼーション(障害のある人々が地域の中で共に生活する)の社会を実現させましょう。

*サマータイムパンフレット|環境省
過去に環境省が作成したサマータイムに関するパンフレット

これはもう呆れ果ててしまいます。
ちょっとした時間の変更でパニックを起こしてしまうような障害者も、健常者だって、たくさんいます。
メリットを強調するために無理やり引き合いにだされた視覚障害者のみなさんも迷惑していうrことでしょう。
なんか、まったく机上の知識だけでむりやり作りあげたとしか思えない「提案」です。

サマータイム、百害あって一利なし

こまでみてきたように、サマータイムの導入など百害あって一利なし。
くれぐれも騙されないようにしましょう。

瞑想して心を落ち着け、アンガーマネジメントを学び心穏やかに暮らそう、という試みをことごとく台無しにしてくれるこの国の政財界。もう、いい加減にして欲しいものです。

こちらは復活してうれしかったものです(^o^)

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